読んだ本の紹介
心理学とUXに関する本を読みました。
読んだ本:UXデザインの法則
UXデザインの法則 ―最高のプロダクトとサービスを支える心理学 | Jon Yablonski, 相島 雅樹, 磯谷 拓也, 反中 望, 松村 草也 |本 | 通販 | Amazon
この本は、システムにおける一般的なUI✖UX関連の事柄について、当たり前と思えるところを心理学的背景や実際の事例に基づいて説明されている。
なので、新しいUIのヒントを得ることが出来る本というより、今あるシステムは心理学的背景をもってして生まれたものなんだよ って記載の方がメイン。手軽にUI改善のヒントを得るというよりは、それよりももっと理論(根本)の話に近い。かつソフトウェア的な話だけでなく、ハード的な話も多かった。
手軽にUI改善のヒントを得ることが出来るサイトとしてこのサイトが好き:UIデザインのための心理学:33の法則・原則(実例つき) | ベイジのUIラボ~業務システムとSaaSのUIを考える (baigie.me)
SEなら必読サイトだよ。
読んで面白かったとこ
- 心理学的に、「カジノのスロットマシーン」と「Twitterのタイムライン」は同じ仕組みらしい。
カジノのスロットマシーンは、だれが今どんな状況にいるのかをすべて記録している。その人がかけた金額と当たった金額をすべて記憶していて負けがかさんだぎりぎりのとこで当たりを上げてドーパミンを出す。レバーを無心で引いてたまに当たる。それを繰り返させる。
Twitterのタイムラインも同様で更新には引くアクションを取らせる。たまに新しい投稿が出る。Twitterのタイムラインの構成はスロットの中毒性と似ているらしい(知らんけどわりと面白い考えだった)(オペラント条件付け) - ユーザはデフォルトを信じ切る。自分の思った通りの設定じゃなくても「それがデフォルト」だからというだけの理由で変更しないらしい。悪さに使えてしまうからシステム設計ではユーザ補助でデフォルトを使うことがあろうが、悪いことで使ってはならない。信頼を失うよ。
- デザインには倫理が伴わなければならない。最近のWebサイトは「サイト滞在時間を増やしたい、メディア広告を見させたい、価値ある情報を抜き出したい」という商業的な思惑が蔓延している。本来、システムやデザインはユーザの価値ある体験を支援するものでなければならない。通販サイトで「残り○点のみ」と出して購買意欲を掻き立てるのは商業的な考えであってその人が本当に欲しいとは限らないんだよ
本の内容
ヤコブの法則
ユーザは他のサイトで多くの時間を費やしているので、あなたのサイトにもそれらと同じ挙動をするように期待している
- ユーザが慣れ親しんだプロダクトと見た目が似ていれば、同じように動くことを期待される
- すでにあるメンタルモデルを活かせば、ユーザは新たなメンタルモデルの学習なしにタスクに集中でき、ユーザ体験の質が高まる
- 変更時の違和感を最小限にとどめるためには、慣れ親しんだバージョンを使い続けられる移行期間を設けよう
Youtubeなんかは、新デザインをリリースする際は、ユーザに新デザインのまま利用するか旧デザインに戻すかを選択させるようにしている
フィッツの法則
ターゲットに至るまでの時間はターゲットの大きさと近さで決まる
- タッチターゲットにはユーザが正確に推せるための十分な大きさが必要
- タッチターゲット同士には十分は距離を開ける
- タッチターゲットはインタフェース内で、ユーザが簡単に到達できる場所になければならない
⇒つまりボタンは十分な大きさがなければならないし、ボタン同士は誤タップがないように十分な感覚がなければならない。入力した後の下部にボタンがなければならない。
ヒックの法則←大事
意思決定にかかる時間はとりうる選択肢の数と複雑さで決まる
- 応答に時間がかかって意思決定が遅くなってるときは選択肢を最小限にまで減らす
- タスクが複雑なら、小さなステップに分けて認知負荷を下げる
- ユーザが情報量に圧倒されないようにおすすめの選択肢を目立たせる
- 段階的なオンボーディングを採用し、新規ユーザの認知負荷を最小限にする
- 単純化によって抽象的になりすぎないようにする
TVリモコンは機能を持ちすぎてしまったため、老人用に機能を限定してあげる。
Googleは検索をした後にどのコンテンツを観たいかを後から選べる
ミラーの法則
普通の人が短期記憶に保持できるのは7(+-2)個まで
- マジカルナンバー7の数字に惑わされて無用なデザイン制約を作らない
- コンテンツを小さなチャンクに分けることで、ユーザがその情報を扱い、理解し、記憶しやすくできる
- 短期記憶の容量は、個々人が持っている知識や状況、文脈によって大きく幅がある
ここで大事な記述は、人間はチャンク(まとまり)で記憶するということ。
例えば「098675309」という文字列と「(09)867-5309」の文字列では、後者の方が覚えやすいということ。電話番号の書式。
文字(アルファベットやひらがな)7つと、単語7つでは同じくらいの負荷で記憶ができるということ。人間は長さよりまとまりで記憶する。
よって、平らな文よりヘッダーなどのタイトル、書式設定、階層構造を用いて簡単に記憶を補助できる。
ポステルの法則
出力は厳密に、入力には寛容に
- ユーザがとりうるアクションや、入力しうる情報すべてに対して理解を示し柔軟に対応し寛容になる
- 信頼性高くアクセス可能なインタフェースを提供しながら、入力、アクセス、および機能の面で実際に起こりうるあらゆることを予測する
- 予測・対応できることが多ければ多いほどデザインはより柔軟になる
- ユーザからの多様な入力を受け入れ、それを要件に合わせて変換し、入力の境界線を定義し、ユーザに明確なフィードバックを提供する
⇒ハードウェアにとらわれないレスポンシブなデザインをする
ピークエンドの法則
経験についての評価は、全体の総和や平均ではなく、ピーク時と終了時にどう感じたかで決まる。
- ユーザジャーニーの中で最も重要な瞬間(ピーク)と最後の瞬間(エンド)に細心の注意を払う
- エンドユーザを喜ばせるためには、プロダクトが最も役立つ瞬間、最も価値がある瞬間、あるいは最も楽しい瞬間を見定めてデザインする
- 人はポジティブな経験よりも、ネガティブな経験をより鮮明に思い出す
Ubereatsとかは、商品が届くまでの退屈な時間を安心させるためにルートや到着時間を利用者に伝えている。
美的ユーザビリティ効果
見た目が美しいデザインはより使いやすいと感じられる
- 見た目が美しいデザインは、人の脳にポジティブな反応をもたらし、実際の場面でもよく機能すると受け取られる
- プロダクトやサービスの見た目が美しければ、人は些細なユーザビリティの問題に対してより寛容になる
- 見た目が美しいデザインはユーザビリティの問題を覆い隠し、ユーザビリティテスト中に課題を発見しにくくしてしまう
フォンレストルフ効果
似たものが並んでいると、その中で他とは異なるものが記憶に残りやすい
- 重要な情報やアクションを視覚的に目立たせる
- 視覚的な要素を強調する際には、互いに競合したり、目立ちすぎて広告だと勘違いされないように抑制する
- コントラストを伝えるのを色だけに頼ると、色覚障がい者やロービジョンを排除することになる
- コントラストを伝えるうえで動きを使用する際には、動きに対し敏感なユーザに配慮する
テスラ―の法則
どんなシステムにもそれ以上に減らすことのできない複雑さがある。複雑性保存の法則
- どんなプロセスにもその核となる部分にはデザインの工夫をもってしても取り除くことのできない複雑性を抱えている。この複雑性による負荷を追うのはシステムかユーザか
- この固有の複雑性をデザインと開発の過程でどうにかしながらできる限りユーザ負荷を減らす
- シンプルにしすぎてインタフェースが抽象的になりすぎていないかを気にする
例えばメール送信には、メール送信者、宛先、メール本文という絶対に必要かつこれ以上減らせないめんどうくささがある。これは送信者を利用者本人にしたり、宛先のメアドを途中入力したらサジェストしてあげたり、本文の候補をシステムが考えてあげたりシステムが手助けすることが出来る。
住所入力で、郵便番号を入れるだけでプリセットしてあげるとかもこれ
ドハティの閾値
応答が0.4秒以内のとき、コンピュータとユーザ双方でもっとも生産的になる
- 0.4秒以内にフィードバックを行うことで、ユーザの注意を惹きつけ、生産性を高める
- 体感性能を改善し、感じられる待ち時間を減らす
- アニメーションを入れることで、バックグラウンドで読み込みや処理が行われている間もユーザをつなぎとめる
- プログレスバーは正確であってなくても待ち時間へのいらだちを和らげる
- ほとんど処理時間がかかっていない場合でも、意図的に遅延させることで体感性能が改善して信頼感の醸成になる
読み込み時間は画面を先に展開しつつも、コンテンツが表示されるまでの時間はスケルトンスクリーンを表示する。
そのほかの心理学
- オペラント条件付け
- 断続的変動報酬
- Twitterのタイムライン的なたまに報酬を受け取れる仕組み
- 無限ループ
- YouTube的なずっと動画を流す
- 社会的肯定感
- いいね機能
- デフォルト
- サービスを利用し始めたときにデフォルト設定から変更をしない
- 摩擦を取り除く
- なにか面倒なことがボタン一つで解決されるならそれを利用する
- 返報性
- 他者から返事を求められるような通知が来ると、返さざるを得ない
- ダークパターン
- ユーザにとっての利益ではなく、システム提供者の利益になるようにシステムをデザインすること
そのほかの出てきたやつ
目標勾配効果
目標へ近づくにつれ、さらに目標を達成しやすくなる。
共域の法則
明確に境界が定められた領域を共有する要素は、グループとして知覚されやすい
近接性の法則
近くにある、ないし、お互いに接する対象は、同じグループとして知覚されやすい
プレグナンツの法則
曖昧ないし複雑なイメージは、できるかぎり簡潔な形態として受け取られやすい。そうすることで認知負荷を最小限に抑えられる。
類似性の法則
互いに類似した要素は、たとえそれがバラバラに配置されていたとしても、1つの絵、形、グループとして知覚される。
連続性の法則
視覚的に繋がった要素はつながりのない要素よりも関連性があると知覚されやすい
オッカムの剃刀
同じ予測を示しているならば、過程が最も少ない仮説を選ぶべきだ
パレートの法則
多くの出来事では効果の80%は20%の要因から生じる
パーキンソンの法則
どんなタスクも時間を使い切るまで膨れ上がる
系列位置効果
系列の最初と最後の項目が最も記憶に残りやすい
ツァイガルニク効果
完了したタスクよりも未完了や中段したタスクの方が記憶に残りやすい